足関節の背屈制限は前方組織と後方組織の両方から影響を受けます。足関節後方組織が短縮していたり、癒着が生じていると足関節背屈時に距骨が後方に動かず(滑り・転がり)、足関節背屈可動域制限が生じます。
足関節背屈可動域制限に関与する後方組織には下腿三頭筋やアキレス腱、長母趾屈筋、Kager’s fat padなどが挙げられ、背屈制限が存在する場合、介入の第一選択肢とされることが多いと思います。
では、足関節前方組織はどうでしょうか?
足関節の前方には3つの筋肉(前脛骨筋・長母趾伸筋・長趾伸筋)の腱が存在し、足背動脈と深腓骨神経が共に走行します。そして、3つの腱を固定するように上から伸筋支帯が覆いかぶさり、その伸筋支帯の表層を浅腓骨神経が走行しています。また、Pretalur fat padが存在します。
足関節前方に組織は多く存在しますが、背屈可動域制限を考えるうえで、前方組織は着目されることが少ないように感じています。ですが、前方組織も足関節背屈可動域制限に関与します。
今回の記事では、3つの筋肉である前脛骨筋・長母趾伸筋・長趾伸筋、それに伸筋支帯とPretalur fat padと足関節背屈可動域制限の関係性について、考えていきたいと思います!
1.足関節背屈可動域制限と下腿伸筋群
なぜ?下腿伸筋群(前脛骨筋・長母趾伸筋・長趾伸筋)は足関節背屈筋なのに、足関節背屈可動域制限に関与するのかを考えていきたいと思います。
下腿伸筋群(前脛骨筋・長母趾伸筋・長趾伸筋)と足関節背屈可動域制限の関係性を知るには、足関節背屈時の関節運動を知る必要があります。OKCでは外返し、CKCではアーチの低下が足関節背屈には重要になります。
では、下腿伸筋群の作用を確認してみましょう。前脛骨筋と長母趾伸筋は足関節背屈にも作用しますが、足部の内返しに作用します。長趾伸筋は外返しの作用がありますが、内反足では長趾伸筋の筋活動が増大していたと報告されています。
つまり、下腿伸筋群は足関節背屈にも作用しますが、過剰な活動が生じると足部の内返しやアーチの上昇に繋がるため、足関節背屈可動域を逆に制限してしまう可能性があります。そのため、過活動が生じている場合はその活動を抑制する必要があります。