足関節捻挫は日常生活やスポーツにおいて、一番生じることが多い怪我の内の一つです。ですが、足関節捻挫の一般的な考えは”そんなに大した怪我ではない””病院に行かなくてもすぐに良くなる”といったような考え方が多いのが現状です。
実は足関節捻挫は簡単に考えてはいけない怪我になります。足関節捻挫では前距腓靭帯(ATFL)の損傷が多く生じます。MRIを用いて急性足関節内反捻挫の損傷部位を調査した報告によると、96%に前距腓靭帯の損傷がみられ、踵腓靭帯の損傷も80%と高率であったと報告されています。
ATFLは足関節関節包の距骨と腓骨を結ぶ部分が肥厚したものであり、いわゆる関節包の一部です。関節包(靱帯)は静的安定化機構であり、その損傷は足関節の安定性を低下させます。
また、足関節捻挫が生じると後脛骨筋腱 (53%)や短腓骨筋 (27%)、長腓骨筋 (13%)など周囲の軟部組織の損傷も生じることも多いため、足関節の機能低下が生じ、”捻挫の再発率は高い”と報告されいます。
さらに、足関節捻挫は再発しやすいだけでなく、適切な治療を受けていない場合、足関節不安定性や症状が残存するとも報告されています。様々な報告がありますが、初回の足関節捻挫後に治療を受けた場合でも、慢性足関節不安定症の有病率は40%であると述べられています。
そして、足関節の不安定症以外にも”骨挫傷・疼痛・ROM制限・不安定症・歩行障害・他関節への影響・変形性足関節症”など多くの問題に繋がります。
この様に足関節捻挫後に増える障害や後遺症をできる限り予防する必要があります。足関節捻挫を予防するためにはリスクを知る必要があり、”内反捻挫・外反捻挫”がありますが、今回の記事では、内反捻挫のリスクについて記載していきます。
足関節捻挫のリスクは多く報告されていますが、最新の情報を取り入れながら、以下の7つについて記載していきたいと思います。
1.足関節捻挫と年齢
まず始めに足関節捻挫は成人の方が生じやすいか?それとも若年の方が生じやすいのか?について記載していきます。
論文の情報や臨床経験からも、圧倒的に足関節捻挫は若年に多く発生します。それは、運動機会が若年の方が多いことやパフォーマンスレベルや身体機能が成熟していないことも原因の一つとして考えられます。最新では、12歳もしくはさらに低年齢で足関節捻挫を発症しやすいと報告されています。
そして、若年の足関節捻挫で気を付けなければいけないポイントがあります。足関節捻挫ではATFLが損傷するのですが、低年齢の場合、捻挫に伴い腓骨の剥離骨折を伴うことが多いです。2019年の報告では、6~12歳(平均9歳)の捻挫例において、62%の剥離骨折が認められたと報告しています。
実はこの”剥離骨折が存在すると、捻挫の再発率が44%”(剥離骨折無しの場合は23%)と報告されています。剥離骨折があるだけで、おおよそ二倍の足関節捻挫の再発率になります。
剥離骨折は腓骨の遠位端に生じやすいです。腓骨遠位端には、ATFLや踵腓靭帯が付着しており、関節包の補強や距骨下関節の安定性の向上に重要な役割を果たすと考えられています。この部分の剥離骨折が生じると足関節捻挫の再発リスクも高くなるため、必ず確認すべきポイントになります。
2.足関節捻挫と性別
続いて足関節捻挫と性別の関係性について考えていきましょう。最新のガイドラインによると、女性の方が捻挫を発症しやすいという報告と性別により捻挫の発症率に変化はないとする報告が存在しています。
矛盾している報告はありますが、私は女性の方が多く足関節捻挫を発症する可能性があると考えています。それは、筋力が男性に比べて生物学的に少ないことやハイヒールなどの踵が高い靴を履く頻度が高いなどの影響があるためと考えています。
3.足関節捻挫とBMI
足関節捻挫はBMIが高い方が捻挫しやすいのか?低い方が捻挫しやすいのか?はどちらともいえない結果が報告されています。
プロサッカー選手や高校のアメリカンフットボール選手の非接触型の足関節捻挫の潜在的な危険因子を評価したものでは、体組成とBMIは非接触型の足関節捻挫の独立した予測・危険因子として報告しています。
その一方で、2009~2016年の間の研究データによると、BMIが低い人は捻挫の割合がわずかに高い傾向にあったと報告されています。また別の報告では、BMIは捻挫のリスク因子ではないと報告しています。
現在では、BMIが高いか低いかで、足関節捻挫を発症するリスクが高まるかどうかについては、矛盾する結果が出ています。そのため、現段階ではBMIについて言及は難しいと考えられます。
4.足関節捻挫と足部形態
足部形態により足関節捻挫のリスク因子が異なるのかはとても興味深い部分ですが、Leg-heel-angle、足部内旋角度、FPI-6、Q-angleなどの形態は足関節捻挫のリスク因子としては関連を認めなかったと報告されています。
しかし、足部形態の中でリスクとして報告されているものもあります。
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