肩関節の疼痛や可動域制限を考える上で大切な神経が2つあります。それは、肩甲上神経と腋窩神経になります。肩甲上神経は多くの組織に分布するため、肩関節の疼痛や可動域制限に関与すると考えられています。
しかし、腋窩神経も最近の報告から、肩関節の疼痛や可動域制限に重要な影響を与えると考えられています。そこで、今回の記事では腋窩神経の解剖から、肩関節の疼痛と可動域制限を考えていきます!
1.腋窩神経の解剖
腋窩神経は腕神経叢のC5~6から由来し、肩甲下筋の下外側を通過し、外側腋窩隙(QLS)を走行します。このQLSが腋窩神経と肩関節の疼痛、可動域制限を考える上で重要になります
外側腋窩隙(QLS)は上方–小円筋、下方 –大円筋、外側 –上腕骨外科頸、内側 –上腕三頭筋長頭、前部 –肩甲下筋のそれぞれが隣接しあったスペースのことを言います。
QLSを通過した腋窩神経は前枝と後枝に分枝します。前枝は三角筋、後枝は小円筋を支配します。また、腋窩神経は上外側上腕皮神経を分枝し、上腕の後面から外側の感覚を支配しています。
QLSを通過した後に分岐する上外側上腕皮神経は肩関節外側を支配するため、外側部痛を考える上ではかなり重要な神経です。QLSを走行する際に腋窩神経が絞扼されると肩関節外側部の疼痛が出現する可能性があります。
また、腋窩神経は外側面以外にも、支配領域は多くあります!今から、紹介する3つ腋窩神経の支配領域は意外と知られていません。ですが、肩関節の疼痛、可動域性制限を考える上では必ず知っておく必要があります!
その3つの支配領域はこちらになります!腋窩神経が前方や下方を支配しているということがわかります。それでは、腋窩神経が支配する3つの領域について説明していきたいと思います!
2.意外に知らない腋窩神経の支配領域と疼痛
腋窩神経は”肩峰下滑液包””上腕二頭筋腱””関節包下部~後面”に腋窩神経が分布します。それぞれについて、詳しく説明していき、肩関節の疼痛との関係性を考えていきたと思います。
2-1.肩峰下滑液包への分布
肩峰下滑液包にも腋窩神経が分布している可能性があることが報告されています。「20肩中12肩で、腋窩神経が肩峰下滑液包へと分枝を出していた」と報告されており、約60%の人が分枝しているということです。
肩峰下滑液包は主に肩甲上神経支配と考えられていますが、腋窩神経も分布しています。そのため、肩峰下滑液包炎や腱板炎による肩の外側面の疼痛は、両方の神経に由来している可能性があると考えられます。
腋窩神経・肩甲上神経のどちらが痛みの原因として考るかは、棘上筋・棘下筋(肩甲上神経支配)、小円筋・三角筋(腋窩神経支配)の筋力や伸張性を評価することで、判断に役立つかもしれません。
※豆知識
腋窩神経は三角筋下滑液包を支配するので、滑液包への圧縮や拘縮が存在すると、肩関節外側の疼痛や可動域制限に関与する可能性があります