中殿筋の機能低下が生じると… ~改善に向けた段階的負荷、トレーニングの着目点と注意点~

 

 

股関節外転筋の筋力低下は通常、中殿筋の筋力低下と考えられることが多いです。中臀筋が股関節外転筋の中で最大の体積と生理学的断面積を持っているという点では相違は無いと思います。

 

 

大殿筋も外転作用がありますが、主たる作用は股関節伸展になりますので、今回の記事では「股関節外転筋の筋力低下=中殿筋の筋力低下」と解釈して頂けると幸いです!

 

では、中殿筋の筋力低下が生じると、何が問題となるのでしょうか?そして、中殿筋の筋力低下に対してはどのような介入を実施し、何に着目・注意して進めるとよいのでしょうか?

 

1.中殿筋の構造と役割

 

中殿筋は前部・中部・後部線維の3つに分けられています。前部線維と後部線維の大部分は、それぞれ表面に位置する大腿筋膜張筋と大殿筋の深層に存在します。3つの線維すべて股関節外転に作用します。

 

 

中殿筋の主たる作用は股関節外転ですが、股関節外転作用以外にも歩行中や片足立ちの際、前額面での体幹と骨盤の安定性を高める役割があります。股関節のスタビライザーとして、中殿筋は日常生活で下肢の静的および動的安定性に重要です。

 

 

筋電図を用いた研究では、立位で股関節外転を実施すると、運動脚では中程度の負荷が生じ、支持脚では高負荷が生じたと述べられており、中殿筋は荷重時の骨盤の安定性に重要と述べられています。

 

 

また、中殿筋の 3 つの部分はすべて股関節外転筋として機能するのですが、前部線維は股関節内旋、後部線維は股関節外旋の機能もあります。

 

 

特に歩行中は後部線維が重要と考えられています。立脚初期では、後部線維が骨盤を安定させ、大腿骨内転と内旋を制御するのに役立ちます。そして、体幹と骨盤の安定性以外にも衝撃吸収の役割もあります。

 

 

特にランニングなどの衝撃が強くなる場合、GMedがすべての股関節筋群の中で最大の平均ピーク筋力を生成することが示されており、大臀筋および大内転筋とともに、ランニング時の立脚初期の垂直方向のサポートの半分を提供しています。

 

日常生活以外でも、スポーツ動作における着地や切り返し、接触プレーにおけるパフォーマンス向上や障害予防の役割もあると考えられています。

 

中殿筋には多くの役割があり、日常生活やスポーツ活動において重要であることがわかります。逆に考えると、中殿筋の機能低下が生じると様々な問題に関連すると考えられます。

 

 

2.中殿筋の機能低下が生じると

 

中殿筋の機能低下の原因は多くあるため、ここでは割愛させていただきますが、中殿筋の機能低下が生じると下肢の運動パターンを変化させます。代表的な変化として、股関節内転-内旋に膝(下腿)外転になります。

 

 

中殿筋の機能低下が生じると、大腿筋膜張筋(TFL)の活動が増大します。TFLの活動増加は、中殿筋の萎縮を引き起こす可能性があり、股関節内旋に作用するため、異常な下肢の運動パターンをさらに悪化させる可能性があると考えられます。

 

 

面白いことに、TFLは筋肉が硬くなりやすい傾向があり、中殿筋は筋肉が弱くなりやすい傾向にあると述べられています。筋肉の不均衡は、硬くなりやすい筋肉と弱くなりやすい筋肉の関係が損なわれたことに起因すると考えられています。

 

 

そのため「中殿筋の機能低下≒下肢バイオメカニクスの変化≒TFLの活動の増大」はセットで生じると考えてもよいかもしれません。

 

このように中殿筋の機能低下が生じると、筋活動の変化やバイオメカニクス的な変化が生じるため、捻挫や腰痛、股関節・膝関節痛なと多くの障害や疾患にも関連しています。

・股関節の外転と外旋の減少は、足首と足の損傷と関連(Webster KA.2013)
・中殿筋の筋力低下と殿筋の圧痛は、慢性腰痛ではよく見られる(Cooper NA. 2016)
・中殿筋の筋力低下は股関節外側痛や股関節唇損傷に関連(Ebert JR.2017,Lewis CL.2019)
・股関節過内旋や膝蓋骨外側変位は、腸脛靭帯炎やPFPSに関連(Han HR.2018)

 

中でも、

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