凍結肩や癒着性関節包炎などの用語は広範囲に使用されていますが、現在の ISAKOSガイドラインでは”凍結肩”という用語の使用を支持しており、癒着性関節包炎は推奨していません。そのため、今回の記事では凍結肩に統一して記載していきます。
凍結肩には、一次性凍結肩と二次性凍結肩があります。原因や外傷が不明で症状が自然発生的に発症する場合を一次性凍結肩、または外傷、手術、肩峰下の痛みなどの他の病理に関連する場合が二次性凍結肩になります。
今回は一次性凍結肩に関するエビデンスを中心に記載していき、私の臨床経験と照らし合わせながら、記事を記載していきたいと思います!
~確認事項~
記事の内容は論文に沿って記載しております。記事の内容には、論文を読んだ私なりの解釈も含まれています。詳細に関しては論文をご自身で確認して頂きますようお願い致します。
1.凍結肩の有病率・リスク
凍結肩は人口の2%~5%が罹患していると報告されており、女性に多い疾患です。凍結肩は50~60歳代に最も多く、ピークは50代半ばです。 凍結肩の最大17%では、5年以内にもう一方の肩にも発症する可能性があります。
糖尿病患者における五十肩の発生率は10.8 ~ 30%の範囲であり、症状がより重篤になり治療に抵抗する傾向があります。五十肩患者ではDMの有病率が10倍高く、糖尿病のコントロールが不十分な場合のHbA1Cの上昇はFSの発症と関連していると考えられています。
また、いくつかの研究では、凍結肩患者における甲状腺機能低下症の有病率(27.2%)と発生率(10.9%)が高いことが確認されているおり、別の研究でも、甲状腺症患者では凍結肩を発症するリスクが2.69倍高いことが示唆されています。
では「なぜ?」糖尿病や甲状腺疾患が凍結肩に発生率に関与しているのかを考えると...
糖尿病であれば慢性炎症の持続、甲状腺機能低下であれば代謝機能が低下するため、組織に行き渡る血流量は減少します。そのため、炎症による組織の肥厚、組織に行き渡る栄養・酸素が欠乏し、組織の修復を阻害しているのではないかと私は考えています。
その他の関連因子として、他疾患による影響(高脂血症・自己免疫疾患)や個人因子が挙げられます。特に糖尿病を含む一連の併存疾患が存在すると、凍結肩の発生率は60%近くに達する可能性があります。 これらの併存疾患は、凍結肩と診断された人の80%以上に見られ、35%以上が3つ以上の関連疾患を抱えていると述べられています。
私の臨床の印象としては、凍結肩はデスクワークを中心としている女性に多い印象です。また、論文にあるように”喫煙や糖尿病を合併している方の症状は改善しにくい”印象があります。
凍結肩の罹患率・リスクについて知ったところで、次は凍結肩の病態はどのようなものかを考えていきましょう!
2.凍結肩の病態
まず凍結肩の病態と言っても、「その病態は不明であり、国際的に標準的な定義は存在しない」というのが現状です。ですが、いくつかの重要なメカニズムが凍結肩の発症に関与していると考えられています。 そのうちの 1 つは、慢性的炎症です。 凍結肩患者からの組織生検サンプルの組織学的分析では、慢性炎症が一貫して明らかになっています。
凍結肩は、関節包だけでなく、腱板筋群や滑液包などの複数の組織に炎症や滑膜炎が存在することが特徴的です。さらに、局所的な血管新生や滑膜増殖も認められる場合も多いです。
基本的に血管と神経は伴走することが多いため、新生血管の出現に伴い、関節包や周辺組織にも新しい神経が走行すると考えられます。神経が増えれば疼痛を感知する範囲も増えると考えられ、凍結肩の疼痛に関与していると考えられます。
また、内視鏡を用いた組織学的検査において、著明な関節上腕靭帯の線維化及び拘縮が確認されています。腱板疎部も含めた線維化も生じることもあると報告されています。
関節上腕靭帯の拘縮が生じると、部位によって異なりますが前方の拘縮では肩関節の外旋、後方の拘縮では内旋、上方の拘縮では内転、下方(腋窩陥凹)の拘縮では屈曲や外転が制限されると考えられます。
腱板疎部は烏口突起、棘上筋の前縁、肩甲下筋の上縁からなる三角形のスペースであり、その間に烏口上腕靭帯(CHL)、上関節上腕靭帯、上腕二頭筋長頭腱が存在します。
つまり、腱板疎部は関節包の前上方複合体の一部であり、上方から肩関節を支持する役割があります。腱板疎部の線維化が生じると前肢は外旋を制限し、後肢は内旋を制限します。
この様に凍結肩は様々な組織変化が生じ、可動域制限や疼痛を引き起こしていることがわかります。しかし、いきなり凍結肩が完成し、可動域制限や疼痛が出現するわけではありません。
では、どのような段階で凍結肩は進行していくのでしょうか?
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