肩関節の病態は古くから記載されており、江戸時代には「凡、人五十歳ばかりの時、手腕、関節痛むことあり、程過ぎれば薬せずして癒ゆるものなり、俗にこれを五十腕とも五十肩ともいう」という文章があります。
現在では、一般的に五十肩という用語が使用されています。最近の報告では、肩関節の可動域制限や痛みを抱える方は年齢とともに増加し、40歳以上の人口の約30%が肩関節の症状を有しているとも言われています。
医療においては、五十肩は肩関節周囲炎(肩関節周囲の組織に炎症を引き起こした状態)として包括的な概念で考えられることが多いです。
肩関節周囲炎は3つの病期に分けて考えられており、それぞれの病期によって、介入方法が異なります。特に、肩関節周囲炎では炎症期の介入が非常に重要と考えています。
組織の炎症状態が持続することは関節包の肥厚や伸張性の低下、筋肉の短縮やスパズムを引き起こし、肩関節可動域の減少や疼痛に繋がります。また、凍結肩になると”手が挙がらない、夜眠れない状態”となります。
今回の記事では、炎症期の治療が上手くいかず、凍結肩になってしまった場合のエコー所見から組織状態、病態に応じたアプローチの内容を検討していきたいと思います。
1.凍結肩とは?
凍結肩とは原因不明で、肩関節可動域制限が著明に出現しているものです。
凍結肩の原因は不明ですが、新生血管や血管内皮増殖因子が関係していることが報告されており、新生血管は関節包の肥厚などの構造的変化に先行していると報告されています。
例えば、エコー、MRI、手術所見の報告では、腱板疎部、烏口下脂肪三角部、関節包の血管・血流の増加が早期の凍結肩の病態に重要な関係性があることが報告されています。
つまり、関節包の拘縮や筋肉自体の変化が生じる前に、微細な炎症や血流動態の変化が生じているということになります。なので、早期に炎症の状態や血流動態を評価することができれば、より効果的な評価や介入に繋げることができると考えられます。
2.凍結肩の血流変化はどこに生じる?
凍結肩では烏口下脂肪三角部、腱板疎部、関節包の血流増加が確認されています。特に私が大切だと考えている部分は烏口下脂肪三角部(Subcoracoid triangle)になります。
凍結肩では健常者と比べ、低流速の血流面積が烏口下脂肪三角部で多かったと報告されています。つまり、烏口下脂肪三角部に血流があれば凍結肩の可能性があると考えることが出来ます。
また、凍結肩において腱板疎部にも線維血管性の瘢痕組織の増殖が認めらるとも報告されています。炎症が生じやすい部位なのでエコーで炎症の状態を確認する必要があります。
まとめると…
”烏口下脂肪三角部、腱板疎部、関節包に炎症所見が認められる場合、組織に何らかの変化が生じ始めている、もしくは何らかの変化が生じている”と考えて評価-介入する必要があります。
では、炎症所見が認められた場合、セラピストが考えるべきことは何でしょうか?
3.炎症所見から考えるべきことは?
まず、炎症が生じているということは、組織に損傷が生じている可能性があるため、炎症を悪化させるようなストレスを与えない、組織修復を遅延させる介入を実施しないことが重要になります。
また、
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