肩甲下筋は回旋筋腱板の総筋量の53%を占め、最も強力な回旋腱板筋です。肩の主要な内旋筋として作用し、肩関節前方の安定性やDepresser機能(下方牽引)として作用しています。
肩甲下筋は肩関節の運動や安定性に寄与する大切な筋肉になるのですが、肩甲下筋の解剖を詳細に見ていくと、肩関節の運動や安定性に寄与する以外に重要な役割があることがわかります。
肩甲下筋は肩甲下窩から起始し、小結節に停止するのが一般的に理解されている肩甲下筋の解剖になります。しかし、実際の停止部は小結節よりも延伸して停止しており、その部位は「舌部」と名付けられています。
舌部は烏口上腕靱帯(CHL)や上関節上腕靱帯(SGHL)と連続し、上腕二頭筋長頭腱(LHB腱)を安定化させる役割があります。下の図のように、LHB腱を挟み込むような通路(Pully system)を形成しています。
また、舌部だけでなく肩甲下筋から続く組織でLHB腱を安定化させる大切な組織があります。それは「横靱帯」になります。横靱帯はLHB腱の上方を通過するものが59%、上下を通過するものが27%であり、肩甲下筋から連続する86%の線維が上腕二頭筋長頭腱の表層を通過します。
この様に肩甲下筋から続く線維である「舌部」は近位で深層からLHB腱を支持し、「横靱帯」は結節間溝の部分で表層or深層からLHB腱を支持しており、LHB腱の安定性を考える上で肩甲下筋の機能は非常に重要であることが理解できます。
では、肩甲下筋が損傷すると…どのようなことが生じるのでしょうか?