手の痺れ・手指の痛みというと正中神経や橈骨神経、尺骨神経の絞扼、胸郭出口症候群、頸椎椎間板ヘルニアなど多くの疾患が考えらます。中でも、手根管症候群(CTS)は一般的な神経絞扼性障害で、すべての神経絞扼性障害の90%を占めています。
臨床でよく出会う手根管症候群ですが、実はセラピストが行える効果的な介入は少ないのが現状です。今回の記事では手根管症候群の基本的な内容から、現在報告されているエビデンスに基づいて介入方法を考えてきたいと思います。
1.手根管の構造
手根管は正中神経と屈筋腱を保護する骨線維性トンネルです。手根横靭帯(屈筋支帯)が天井を作り、手根骨が床を形成します。手根管には、正中神経と深指屈筋の4本の腱、浅指屈筋の4本の腱、長母指屈筋の1本の腱の計9本の腱が走行します。
この骨線維性のトンネルの中を正中神経が通過する際に圧迫、摩擦ストレスが加わり、正中神経に炎症・腫脹が生じることでCTSが生じると考えられています。
2.手根管症候群の原因
CTSの最も一般的な原因には、遺伝的素因、タイピングなどの手首の反復運動、機械作業、肥満、関節リウマチなどの自己免疫疾患、妊娠などが挙げられていますが、正確な原因は分かっていないのが現状です。
内科的な疾患、ホルモンの変化、手指の過剰な使用など複合的な原因により、正中神経へのストレスを増加させ、神経自体の腫脹や絞扼を引き起こし痛みを引き起こします。
また、手根管には”subsynovial connective tissue (SSCT)”という結合組織が存在しており、炎症、ホルモンの変化に伴う線維化が生じることで、正中神経の動きを制限したり、ストレスの増大に繋がる可能性があります。
そして、CTSの原因の中でも”肥満と糖尿病”は要チェック項目です。CTSの危険因子において、1型および2型糖尿病との強い関係性を示す報告があります。太りすぎはCTSのリスクを1~5倍に高めると報告されています。
糖尿病があることで、動静脈の血流循環の低下、局所浮腫の増加、正中神経の神経内微小循環の障害などが生じる事がCTSの発症に関与しているのではないかと私は考えています。
3.CTSの症状
CTSでは手指の痺れ・痛み・感覚障害(左右差)の出現頻度が高いです。特に、断続的に起こる”夜間痛”や感覚障害、起床時に生じる感覚障害が特徴的です。
正中神経は手関節掌側面と母指・示指・中指・環指1/2の領域を支配するため、同領域に痺れや感覚障害が出現すると考えられますが、臨床では手掌面全体の痺れや手根管より近位にも痛みを訴える場合もあります。
CTSは通常、手関節より遠位の手指の症状が特徴的ですが、重症例では近位の前腕、上腕、時には肩にも症状が広がることもあると報告されています。
また、CTSが重度になると、正中神経が支配する筋肉の筋力低下が起こり、母趾球筋の萎縮や手指の巧緻性の低下、手のひらが扁平になる「猿手」が生じることも知られています。
4.CTSの評価
セラピストが行える評価としては、
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