変形性膝関節症(以下:膝OA)は日本だけでなく、世界でもっとも多い疾患のうちの一つで、多彩な症状を引き起こし、医療費の増大や日常生活に支障を与えます。
膝OAの発症要因は多く考えられており、変えることができる要因と変えることができない要因があり、発症を完全に防ぐことはできない疾患です。
そのため、膝OA発症後は症状の発生を予防することや膝OAの進行を遅らせることを目的とした、介入方法を考える必要があります。
膝OA発症後は症状の発生を予防することや膝OAの進行を遅らせることを考える上で、大切な概念があります。それは”KAM"になります。KAMは膝OAの進行や予後予測の因子として考えられているため、膝OAの進行や症状を考える上でとても大切になります。
今回の記事では、”KAM"の基礎的な内容から、KAMがどのような影響を与えるのか?KAMの評価方法や適切な介入方法が存在するのか?などを中心に記事を記載していきます!
1.What is KAM?
KAMは”Knee Adduction Moment”の略称で、日本語では”外部膝関節内転モーメント”になります。KAMは下腿を内転させ、膝関節を内反強制するように作用します。膝関節内側の接触力の代用尺度として、信頼できる指標とされています。
KAMの大きさは”床反力ベクトル×膝関節中心からの距離”で考えます。膝関節の内反が大きければ、床反力ベクトルと膝関節の距離が大きくなるため、KAMが大きくなります。
床反力ベクトルと膝関節の距離の変化が無くても、床反力自体が大きくなると、KAMは大きくなります。歩行の立脚相では、KAMのピークは2つ存在し、踵接地と蹴り出しの際にKAMが大きくなります。立脚初期と立脚後期の接触力がKAMとよく相関していることが報告されています。
また、KAMは一時的な大きさだけを考えるのではなく、KAMの力積も考える必要があります。KAMは常に生じており、トータルでどれくらいの力が膝関節に加わったのかを把握することも大切です。力積が大きければ、膝関節に加わった負荷も大きくなります。
力積は健常者と膝OA患者では異なっており、膝OA患者の方が健常者よりも力積は大きいです。また、下の図からわかるようにKAMのピークも大きいことがわかると思います。
では、KAMが大きいと何が問題になるのでしょうか?
2.膝OAとKAMの関係性
KAMは膝関節内側の接触力の代用尺度でもあり、KAMが大きいと内側に存在する半月板や軟骨に加わる力も大きいことが想像できます。そのため、膝OAの進行や軟骨の変化に寄与すると考えられています。
KAMが大きいと
・内側OAの存在
・X線による疾患の重症度
・進行速度
・OA症状の存在
の強力な予測因子となります。膝OAでは、通常歩行でKAMが上昇することが実証されているため、KAMの影響は必ず考えておく必要があります。
KAMが大きくなることで、膝OAの進行や症状の悪化が生じるのですが、膝OAの進行や症状の悪化がKAMを大きくする可能性もあります。例えば、膝OAでは歩行時の筋活動が変化します。この筋活動の変化がKAMを増大させる要因になる可能性があります。
膝OAの歩行における筋活動の変化の特徴として、
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