腓骨の剥離骨折は単純X線では見逃すことも多く、エコーを使用することで見逃しが少なくなります。実は、腓骨の剥離骨折以外にも、捻挫後の踵骨前方突起骨折やリスフラン靱帯損傷も見逃しが多い問題です。踵骨前方突起骨折は、X線写真で最大88%が見逃されるとも報告されています。
踵骨前方突起は解剖学的に重要な部分です。骨折を見逃すと長期的な愁訴に繋がる可能性もあります。そこで、今回の記事では踵骨前方突起の解剖学的に重要な部分と評価について考えていきたいと思います!
1.踵骨前方突起の解剖
踵骨前方突起は文字通り踵骨の前方にある突起のことです。踵骨前方突起は立方骨と関節を形成し、舟状骨と関節を形成することもあります。
踵骨前方突起の重要な部分は立方骨と関節を形成する以外に軟部組織の付着部となっていることです。代表的なものに二分靱帯、背側踵立方靱帯、短母趾伸筋、短指伸筋があります。
二分靱帯は踵骨前方突起の中心-内側から発生し、舟状骨と立方骨へ、背側踵立方靱帯も踵骨前方突起から立方骨に達し、ショパール関節の安定性に関わる重要な組織です。
では、踵骨前方突起骨折の発症率はどれくらいあるのでしょうか?
2.踵骨前方突起骨折の発症率
踵骨前方突起骨折は関節外骨折の3~23%を占めると報告されています。私の臨床経験上、踵骨前方突起の骨折は足関節外側靭帯損傷に合併することが多いですが、単独で損傷する例もいくつか経験しています。
また、踵骨前方突起骨折を分析したMRIの研究では、距腿関節の76%、踵骨立方関節の100%に損傷が認められたと報告されているため、複合的な損傷を頭に入れて評価する必要があると考えています。
3.踵骨前方突起骨折のメカニズム
踵骨前方突起骨折は足関節捻挫に合併することが臨床上多いため、足関節底屈+内反による損傷が中心と考えられます。ですが、足関節背屈と外転に伴う、立方骨と距骨間で踵骨前方突起が圧迫され、損傷する可能性も報告されています。
ここまで、踵骨前方突起の解剖学的な重要性、踵骨前方突起骨折の発症率や発生メカニズムについて記載してきました。次は、セラピストが知っておくべき臨床所見・評価方法について記載していきます!
4.踵骨前方突起骨折の臨床所見と評価