日本における肩こりの有訴者数は男性が2位、女性が1位です。コロナの影響でデスクワークの時間が増え、スマホの普及なども影響して、国民病かつ現代病が肩こりだと思います。
肩こりには定義が定められており、「後頭部や肩、肩甲骨にかけての筋肉のこわばりによる不快感や鈍い痛み」と定義されています。つまり、痛みだけでなく、感覚的な問題も肩こりに含まれるということです。
肩こりは原因がわからない肩こりを一次性、原因となる疾患がある肩こりを二次性に分けています。今回の記事では、原因となる疾患がない一次性の肩こりについて中心に考えていきます。
肩こりの原因として姿勢の変化に伴う、筋肉の硬さの上昇が原因として考えられています。中でも、僧帽筋の筋の硬さの上昇が肩こりの原因として考えられることが多いです。
肩こりがある場合、僧帽筋の硬さが上昇していると報告されていますが、矛盾する報告もいくつか存在します。そのため、僧帽筋の硬さだけが肩こりの原因と考えるのは注意が必要です。
例えば、肩こりの患者では僧帽筋の硬さが増大していると報告されていますが、症状の程度とは相関がないと述べられています。
筋硬度の増加は関節の安定性を高め、外部負荷に対する抵抗力を高める可能性が示唆されています。そのため、僧帽筋の硬さを盲目的に緩めてしまうと、より症状の悪化を引き起こす可能性もあります。
1.肩こりのリスク
では、肩こりを考える上で、僧帽筋の筋硬度の上昇以外にはどのような点について考えていけばよいのでしょうか?まずは、肩こりのリスクについて考えていきたいと思います!
女性の方が肩こりの訴えが多い理由としては、僧帽筋の酸素飽和度と圧痛閾値が低いことが挙げられています。性別的な影響は変化させることは出来ませんが、リスクとしては知っておくべきです。
静止状態や座位は頚椎への負荷が、頭部運動時よりもはるかに高いと報告されています。また、静的な姿勢で繰り返し動作する作業は、筋疲労が発生しやすいと述べられています。そのため、同じ姿勢を長時間保持している仕事に従事しているような場合は注意が必要です。
また、仕事や日常生活でのタブレットやスマートフォンの使い過ぎは頭部の姿勢を一定にし、継続的な筋収縮は筋力低下と疲労をもたらし、慢性的な頸部痛に発展しやすいと報告されています。
長時間の座位やスマートフォンの使用は、頭頚部の位置を一定の位置に保持します。このように”頸部を動かさない”という行動が肩こりのリスクに繋がっていると考えられます。
そして、精神的な問題も肩こりのリスクとして挙げられます。睡眠障害や日中の眠気は、筋骨格系の痛みを引き起こし、回復を妨げる重要な危険因子であることが知られています。
そのため、肩こりがある場合は睡眠状況やストレスの程度なども考慮し、しっかりと眠れる環境を作ることやストレスを減らすことも大切になります。では続いて、具体的な肩こりの原因について考えていきます!
2.肩こりの原因
肩こりの原因として以下の様な点が挙げられます。リスクと原因は繋がるので、セット覚えるとよいと思います!
2-1.頭部前方変位姿勢(FHP)
頭部前方変位姿勢(FHP)は長時間の座位やタブレットの使用と関連があります。FHPの状態では頭部の位置を修正しても、僧帽筋の活動が大きく、疲労度が高いと報告されています。
また、FHPでは僧帽筋中部、下部や前鋸筋の筋力低下を引き起こす可能性があります。肩甲骨周囲筋の筋力低下は頭頚部や肩甲骨の不安定性を引き起こすため、僧帽筋上部やその他の頭頚部の筋が過剰に収縮し、筋肉の過剰使用よる疼痛を訴える可能性があります。
この様にFHPは筋肉の収縮動態も変化させ、筋肉の過剰使用による疼痛も引き起こします。そのため、長時間の座位姿勢とFHPはセットで考え、どちらに対しても対処、介入する必要があります。
2-2.僧帽筋の血流動態
僧帽筋は上部は静脈弁が欠如しており、微小循環が障害されやすいと考えられています。また、慢性的な首と肩の不調を持つ場合、筋肉の血流と有酸素運動能力の低下が報告されています。
僧帽筋上部の解剖学的な理由から、FHPや長時間の座位姿勢は僧帽筋の過剰収縮や持続的な収縮を引き起こし、血流動態に変化を与えるため、肩こりに関与する可能性があります。
3.肩こりへの対処と介入
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