肩関節には棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋といった、肩関節を支持する4つのインナーマッスルと呼ばれる筋肉が存在します。
これら4つは腱板筋群として扱われ、上腕骨頭を覆うように付着しています。腱板筋群は肩関節の安定や運動において非常に重要な役割があると考えられています。
これらの腱板筋群は若年の内は正常な構造や機能が保たれていますが、年齢を重ねるにつれて損傷、または断裂が生じることが知られています。
ここで少し、私の経験をお話しします。私はクリニックに勤務しているのですが、来院される患者さんの中に「腱板が切れているから肩が挙がらない」と告げられた患者さんがある程度います。
私の経験上、棘上筋が損傷していても、棘下筋の筋腹が損傷していても、肩関節屈曲ができる患者さんは大勢います。なので、腱板が切れているからと言って、肩関節挙上ができないというのは語弊があると思います。
一方で、腱板筋群が損傷すると肩関節が挙上できなくなる方がいるのも事実です。ここで、話を整理すると腱板は年齢を重ねると損傷・断裂する可能性は高くなるが、必ずしも肩が挙がらなくなるわけではないということです。
つまり、「腱板断裂のある患者の中には、肩を挙上できる方もいるが、同じ腱板損傷でも肩が挙上できない者もいる」ということです。
では、腱板が損傷・断裂しても肩が挙上できる可能性があるなら、リハビリをすれば何とかなるのではないかと考えることもできます。
しかし、現実はそう上手くはいきません。実は、腱板の損傷・断裂する部分により、ある程度予後が決まってくる可能性があるのです。今回はその予後予測について考えて行きたいと思います。
1.腱板断裂の予後予測
腱板は断裂・損傷のタイプによって、肩挙上の可動域が変化する可能性があります。「腱板断裂をタイプ別に分類し、痛み・偽性麻痺・自動挙上可動域の項目を評価」した報告があります。
1-1.肩関節挙上可動域の予後予測
これらの中で、肩関節挙上が一番制限された腱板断裂のタイプは「Type B:棘上筋・肩甲下筋上部・下部線維損傷」になります。
逆に、腱板断裂をしていても「Type A:棘上筋・肩甲下筋上部線維の損傷」「Type D:棘上筋・棘下筋損傷」では、殆ど肩挙上可動域が制限されていないことがわかります。
つまり、「Type A:棘上筋・肩甲下筋上部線維の損傷」「Type D:棘上筋・棘下筋損傷」の場合、リハビリにて可動域を再獲得できる可能性が高いです。逆に「Type B:棘上筋・肩甲下筋上部・下部線維損傷」の場合、リハビリを実施しても可動域制限が残存する可能性が高いと考えられます。