Scapular Assistance Test、Scapular Retraction Test ~臨床でかなり使える評価法~

 

 

 

”肩関節周囲炎や投球肩障害の方が来院されたらどのような評価を実施していますか?”

 

 

屈曲可動域、1st2nd3rdの内外旋、腱板周囲筋の筋力、インピンジメントの有無など肩甲上腕関節の評価を実施することが多いと思います。 

  

しかし、これらの評価は疼痛を誘発する可能性がある評価であり、私は最初から実施することあまりありません。また、肩甲上腕関節は影響する組織が多く、評価項目も多いため、やみくもに評価を実施することは患者の負担増加にも繋がります。

  

なので、私はまず肩甲上腕関節、肩甲胸郭関節どちらに問題が大きく生じているのかを大雑把に把握することから始めることが多いです。

 

 

 

では、肩甲上腕関節、肩甲胸郭関節どちらの問題が大きいのかはどのように判断するのでしょうか?私は臨床でScapular Assistance Test(SAT)、Scapular Retraction Test(SRT)を用いることが多いです。

 

肩関節周囲炎や投球肩障害の方は肩甲骨が下方回旋、前傾、外転のアライメントを呈していることが多いため、SAT(徒手的に肩甲骨を誘導)を実施し、肩甲骨のアライメントが肩関節の疼痛や可動域制限に与えている影響を評価します。また、SRT(徒手的に肩甲骨を固定)にて、肩甲骨周囲筋の筋力低下なのか、短縮なのかを評価しています。

 

 今回の記事では、臨床で使うことが多い、Scapular Assistance Test(SAT)、Scapular Retraction Test(SRT)の方法やどのように結果を解釈するのか、解釈から介入へのヒントについて記載できればと考えています。

 

1.Scapular Assistance TestSAT)とは?

 

Scapular Assistance Test(SAT)は、肩関節屈曲の際に肩甲骨の上方回旋と後傾を徒手にて補助するテストです。SATを実施することで、肩関節の疼痛が軽減するかどうかを確認します。

 

 

 

また、肩甲骨の上方回旋・後傾だけでなく、状況に応じて内転や挙上を徒手的に誘導し、評価も実施しています。SAT陽性、陰性の基準としてはNRSで2ポイントの疼痛減少が認められた場合を陽性と判断します。

 

 

SATは肩関節周囲炎、肩関節不安定症、投球肩障害など肩関節疾患や障害に対して用いることが出来る評価方法です。汎用性も高いことや道具が必要ないことも私は臨床でよく用い理由の一つです。

 

 

2.SATの解釈

 

SATを実施し、陽性であれば肩甲胸郭関節の問題が大きいと考えて、より詳細な評価に移ります。SATが陰性であれば、肩甲上腕関節の問題を考えて評価を切り替えます。

 

※注意点
SATが陽性であった場合、他の評価も実施し、原因となる組織を判断する必要があります。SATだけでは、原因組織を導き出すことは困難であることを理解しておく必要があります。

   

2-1.肩甲骨上方回旋、後傾でSAT陽性

肩甲骨の上方回旋と後傾でSATが陽性の場合
・僧帽筋や前鋸筋の筋力低下(筋出力低下の問題)
・菱形筋、肩甲挙筋の短縮(肩甲骨上方回旋の可動域制限)
・小胸筋、前鋸筋上部の短縮(肩甲骨後傾の可動域制限)
上方回旋を引き出す筋の問題なのか?上方回旋を制限する筋の問題なのか?後傾を制限する筋の問題なのか?を考える必要があります。

 

※肩関節の疼痛は肩甲骨の運動学の変化と頻繁に関連していると報告されています。典型的には、肩甲骨内旋の増加、肩甲骨上方回旋の減少、後傾の減少が挙げられています。

Ribeiro LP, Barreto RPG, Pereira ND, Camargo PR. Comparison of scapular kinematics and muscle strength between those with a positive and a negative Scapular Assistance Test. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2020 Mar;73:166-171.

 

 

2-1-1.僧帽筋と前鋸筋の機能低下の評価

僧帽筋や前鋸筋の機能低下によるSAT陽性であれば、僧帽筋と前鋸筋の筋出力を引き出した挙上評価を実施します。

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