肩関節挙上制限 ~上腕骨と肩甲骨の運動学から考える評価と介入~

 

 

肩関節の運動は肩甲上腕関節や肩甲胸郭関節だけでなく、肩鎖関節・胸鎖関節、解剖学的な関節とは言えませんが第二肩関節など多くの関節の複合運動で達成される運動になります。

 

 

多くの関節運動が肩関節の運動に関与するのですが、挙上運動に限って言えば、上腕骨と肩甲骨の複合運動が重要になります。上腕骨の運動は肩甲上腕関節、肩甲骨の運動は肩甲胸郭関節の運動になります。

 

この上腕骨と肩甲骨の運動は古くから述べられており、Scapulohumeral Rhythm(肩甲上腕リズム)と名付けられています。肩甲上腕リズムは上腕骨と肩甲骨が21で動くという考え方になります。例えば、肩関節挙上90°で考えると、上腕骨が60°挙上し、残りの30°は肩甲骨の上方回旋が生じて、肩関節の挙上が達成されるという考え方になります。

 

 

この様に、肩関節挙上を考える上で、重要になる上腕骨と肩甲骨の動きを肩甲上腕リズムやそれ以外の視点から深堀りして、肩関節挙上にはどのような動きが大切になるのかを考えていきたいと思います!

 

1.肩関節挙上時の上腕骨の動き

 1-1.上腕骨の挙上角度(挙上-下制)

まずは肩関節挙上時の上腕骨の動きについて考えていきます。下の図は縦軸が上腕骨の挙上角度、横軸が肩関節全体の挙上角度になります。縦軸の数値がマイナスになれば上腕骨の挙上角度が増大していきます。

 

 

この図からわかることは、肩関節屈曲でも、肩甲骨面挙上でも、外転でも角度が増大するにつれて、上腕骨の挙上角度が直線的に増大していることがわかります。

 

そして、肩関節全体の挙上が120°に到達すると、上腕骨の挙上は80°となっており、残りの40°は肩甲骨の動きであることがわかります。つまり、先ほど紹介した肩甲上腕リズム(上腕骨と肩甲骨の動きは21)はバイオメカニクス的にも立証されているということがわかります。

 

1-2.上腕骨の回旋角度(内-外旋)

続いて、上腕骨の内-外旋について見ていきます。下の図は縦軸が上腕骨の回旋角度、横軸が肩関節全体の挙上角度になります。縦軸の数値がマイナスになれば上腕骨の外旋角度が増大していきます。

 

 

この図からわかることは、肩関節屈曲や肩甲骨面挙上では、挙上角度が増大するにつれて、上腕骨の外旋角度が増大していきますが、外転では上腕骨は一度外旋方向に動きますが、途中から内旋方向の運動に変化することがわかります。

 

そして、面白い点がもう一つあります。それは肩関節の挙上面の違いで、初期の肩関節外旋角度が異なる点です。屈曲では、初期の外旋角度は10°程度ですが、外転では50°を越える外旋角度が必要になります。

 

臨床でも、外旋角度が低下している場合、外転可動域が制限されていることが多いため、肩関節外転可動域を拡大させた場合、上腕骨の挙上や下方関節包の影響だけでなく、外旋可動域も考える必要がありそうです!

 

1-3.上腕骨の上-下方変位

続いて、上腕骨の上方-下方変位について見ていきます。

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