肩峰下滑液包の解剖と役割 ~腱板の再生を促す?~

 

 

肩関節の疼痛の原因には多くの組織が関与します。その中でも、肩峰下滑液包(以下:SAB)は、疼痛を引き起こす主要な組織と考えられています。

 

 

 

SABが何らかの原因(インピンジメントや外傷)で損傷や炎症が生じると、疼痛を伴い、肩関節の可動域、特に屈曲・外転の制限に繋がることが多いです。

 

 

つまり、SABは肩関節の疼痛や可動域を考えるうえで重要な組織と考えることできます。そこで、今回の記事では、SABの解剖から肩関節の疼痛や運動に対してどのように寄与しているのかを考えていきたいと思います!

 

1.まずはSABの解剖

SABは肩関節の中で一番大きい滑液包になります。肩峰、三角筋の深層かつ棘上筋の表層に存在します。

 

 

一般的にSABは三角筋下滑液包、肩甲下滑液包と独立して存在していると考えられていますが、三角筋下滑液包、肩甲下滑液包と連続している場合もあり、大きさは個体差が存在しています。

 

 

また、SABは棘上筋、三角筋、肩甲下筋、conjoint-tendon、烏口突起下面、烏口肩峰靱帯と結合します。中でも、三角筋と烏口肩峰靱帯とは強固に結合しています。SABは烏口肩峰靱帯の全長に付着し、靱帯からコラーゲン線維が合流しています。その他の組織とは緩やかな結合が報告されています。

 

 

このようにSABは多くの組織と連続、隣接しているため、多くの組織から影響を受ける可能性があります。そのため、他の組織との関係性や組織状態を考慮して評価や介入が必要になります。

 

SABの位置と個体差について記載しましたが、SABの解剖で必ず知っておかなければならないことがあります。それは”支配神経と感覚神経”です。SABは多くの神経から支配されており、多種の感覚神経も存在しています。

SABの主な支配神経は”肩甲上神経”になります。肩甲上神経は棘上筋・棘下筋を支配しますが、SABや関節包も支配します。その他にも、腋窩神経や外側胸筋神経もSABを支配すると考えられています。

 

支配神経を考えると、SABに問題が生じると、棘上筋・棘下筋(肩甲上神経)、三角筋・小円筋(腋窩神経)、大胸筋(外側胸筋神経)など多くの筋肉に、反射性の収縮や筋スパズムなどを引き起こす可能性が考えられます。

 

 

また、SABは感覚神経の宝庫です。それぞれの部位によって存在する感覚神経の種類や量は異なりますが、多くの感覚神経が存在していることがわかります。特に肩峰の周辺は神経が豊富に存在します。

 

 

 

感覚神経の中でも、SABには有髄・無髄の自由神経終末が存在しており、腱板や上腕二頭筋長頭と比べても、自由神経終末の密度が著しく高いと報告されており、疼痛を感じやすい組織と言えます。

 

 

 

そのため、腱板断裂や外傷などにより、SABに炎症や腫脹が出現すると、疼痛が生じやすいと考えることができます。

 

ここまでをまとめると…
・SABは多くの組織と連続している
・SABは3つの神経支配を受けている
・SABの炎症や水腫は疼痛に関連する可能性がある

 

では、これらの解剖学的な情報からSABがどのように肩関節の運動や疼痛に寄与しているのかを考えていきましょう!

 

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