2019 年 国民生活基礎調査の概況 - 厚生労働省では、腰痛の有訴者率は男性では第1位、女性では第2位に位置しています。つまり、腰痛は国民病といっても過言ではありません。
しかし、腰痛といっても原因は多く存在し、筋肉、神経、骨、心因、労働環境、運動習慣の有無といった要素を一つ一つ、丁寧に評価していく必要があります。そこで、今回の記事では、「神経」の中でも「上殿皮神経」に着目して、腰痛を考えていきたいと思います!
1.上殿皮神経の解剖
上殿皮神経は4-6本の枝から構成される、純粋な知覚神経で、腰部と殿部の知覚を支配しています。上殿皮神経は胸腰部の後神経根(TH11~L3)に起始します。
TH11~L3から起始した後、多裂筋の外側、脊柱起立筋の中を走行し、大腰筋・傍脊柱筋を通過し、腸骨稜近辺で胸腰筋膜を貫き、臀部に分布します。大転子まで走行する例も報告されています。上殿皮神経の走行を考えるだけでも、絞扼・圧迫される部位は多くありそうですね!
2.上殿皮神経障害の発生率
腰痛のなかで、上殿皮神経障害の発生率は約14%と報告されています。また、上殿皮神経障害は女性に多く発生し、中高年に多く生じます。
腰痛患者が10人いたら、1人は上殿皮神経障害が存在する可能性があるということなので、少ない発生率ではないですね!
3.上殿皮神経障害の症状
上殿皮神経障害の症状は多岐に渡ります。一般的な腰痛の症状だけでなく、坐骨神経痛のような下肢症状、間欠性跛行(腰部脊柱管狭窄症でも出現)、鼠径部痛(仙腸関節障害でも出現)が生じる場合もあります。
上殿皮神経障害は多岐に渡る症状から、見逃されることが多く、正確な評価を行わなければならないことがわかります。下肢に痺れがあるから、坐骨神経痛や椎間板ヘルニア、間欠性跛行があるから、腰部脊柱管狭窄症という、思考停止状態ではまずいということです!
4.上殿皮神経が障害される要因
上殿皮神経が障害される要因は大きく分けて4つあります!それぞれの要因について、説明していきたいと思います!