人工股関節全置換術後の歩行 「意外に多い歩行障害の残存に対し、何を見て何に介入する?」

 

 

変形性股関節症(以下:股OA)は股関節の重大な疼痛や障害を生じさせる原因となる疾患です。45歳以上の49%が症候性の股OA(症状が存在するOAのこと)を抱えていると考えられています。

 

 

症候性の股OAでは、症状を管理するために保存療法や投薬などが用いられます。しかし、保存的介入でも症状が緩和、軽減しない末期の股OA患者に対しては、人工股関節全置換術 (以下:THA) が適応となることもあります。

 

THAを実施することで、痛みの軽減、股関節機能の回復、生活の質の向上します。さらに、THA後は患肢と対側肢の両方の股関節と膝の動的ROM、片肢支持時間の対称性、歩幅、歩行速度と歩行パターンの改善が示されました。

 

 

しかし、すべてが改善するわけではなく、「階段昇降」や「椅子から立ち上がり」などの一部の動作が困難な場合もあります。

 

また、術前の異常な歩行パターンもTHA後に持続する可能性があり、術後1年後も持続すると報告されています。そして、日常生活に重要となる「歩行速度の有意な改善」も獲得できない場合もあります。

 

 

確かに、THA後では股関節機能や歩行状態が改善するのですが、健康な対照と比較した場合、動的下肢ROM、股関節内転角、歩幅、歩行速度、歩行の対称性において依然として問題が残存することも多いです。

 

 

そのため、セラピストはTHA後は自然と機能や歩行状態が改善すると考えるのではなく、患者ごとにしっかりと歩行を評価し、症状や日常生活に支障となっているのであれば、改善に努める必要があります。

 

 

1.THA後に残存する歩行の問題とは?

 

THA後に残存する歩行の問題点は多岐に渡ります。代表的なものとして、股関節の可動域低下、歩幅の減少、歩行速度の低下、異常歩行(歩行の質の低下)などがあります。また、THA後の患者からよく聞かれる訴えには「腰痛」「股関節内側の痛み」「下腿のツッパリ感」などが挙げられます。

 

 

皆さんはいかがですか?私は臨床で「股関節は良いけど、腰は痛いまま」「足がつっぱって痛い」などの訴えをよく聞いていました。これらの症状は股OAに併存する症状と考えられるため、セラピストはしっかりと問題点を見つけて介入する必要があります。

  

では、歩行のどこに着目して考えていくべきでしょうか?

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