僧帽筋×肩甲骨 ~安定と運動の制御~

 

 

肩甲胸郭関節の安定性と運動をコントロールする筋肉として、僧帽筋と前鋸筋が挙げられます。両筋は強調して肩甲骨に作用するため、僧帽筋または前鋸筋の機能低下は肩甲骨の安定性と運動を変化させる可能性があります。

 

 

今回の記事では、僧帽筋に着目し、解剖学的な観点から僧帽筋の機能を考えていきたいと思います。

 

 

1.僧帽筋の解剖学

 

僧帽筋は肩甲胸郭関節をコントロールする筋肉の中で最も表層に位置し、3つの部分に分けられます。3つの線維は協調して働きますが、それぞれの作用は異なります。

 

 

1-1.僧帽筋上部線維の解剖

僧帽筋上部は後頭部、頚靭帯から起始し、ほとんどの線維はほぼ垂直に下降して、鎖骨の遠位3分の1の後縁に付着する前には線維は平行に走行します。そのため、直接的に肩甲骨へ与える影響はほとんどありません。

 

 

僧帽筋上部の主な機能としては鎖骨を挙上・外転に作用します。鎖骨の挙上と外転は肩甲骨の上方回旋と外旋に寄与します。そのため、僧帽筋上部線維は鎖骨の運動を介して肩甲骨の上方回旋と外旋に関与します。

 

 

僧帽筋上部は、肩甲骨ではなく鎖骨の遠位部に付着しているため、基本的に僧帽筋上部線維には肩甲骨上方回旋の作用はほとんどなく、存在したとしてもごくわずかと考えられます。

 

 

1-2.僧帽筋中部線維の解剖

僧帽筋中部線維はC7Th4の棘突起から起始し、肩峰と肩甲骨(三角筋結節)に付着します。僧帽筋中部線維の棘突起から生じる筋線維は大きく、筋断面積は最も大きいです。

 

 

僧帽筋中部線維は平行に走行し、肩峰と肩甲骨に付着するため、作用としては肩甲骨の内転があります。また、僧帽筋中部線維は肩鎖関節に生じる力があるため、肩甲骨の外旋作用があります。

 

 

基本的に僧帽筋中部線維には上部線維と同様に肩甲骨上方回旋の作用はほとんどありません。しかし、僧帽筋下部線維と協調的に働くことにより、肩甲骨の上方回旋にも関与します。

 

 

1-3.僧帽筋下部線維の解剖

僧帽筋下部線維はTh4T12の棘突起から起始し、肩峰と肩甲骨(三角筋結節)に付着します。下部線維は他の線維よりも線維長が長いため、運動するにあたり大きなモーメントアームを持ちます。

 

 

 

僧帽筋下部線維は中部線維と共に肩甲骨の内転作用があります。また、前鋸筋下部線維と共に働くことで、肩甲骨の上方回旋と後傾にも作用します。

 

 

 

1-4.僧帽筋の解剖学的な機能のまとめ

解剖学的な観点から、僧帽筋のみでは肩甲骨の上方回旋の作用はほとんどないことがわかります。しかし、肩鎖関節の動きを引き出すことや前鋸筋と協調的に働くことで、Force Coupleを形成し、肩甲骨の安定や運動制御に関与します。

 

 

 

では、僧帽筋の問題が生じると、どのような悪影響が生じるのでしょうか?

 

 

2.僧帽筋の問題が生じると...

 

僧帽筋の問題が生じると、肩甲骨の運動制限や安定性の低下はもちろん、肩関節の可動域制限、筋力低下、インピンジメントなど様々な障害に繋がる可能性があります。

 

 

 

僧帽筋の問題と言っても、筋力低下や萎縮が生じることは稀です。どちらかというと、僧帽筋の収縮感覚がわからない、収縮のタイミングの異常に伴う、肩甲骨の運動の異常が多いです。例えば、肩関節屈曲に伴い、肩甲骨は後傾、上方回旋、後傾が生じます。しかし、僧帽筋の収縮タイミングや活性化の低下が生じると、肩甲骨の動きが制限され、肩関節可動域制限に繋がる可能性があります。

 

 

 

特に、

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