小殿筋は大殿筋や中殿筋の深層に存在し、関節包に隣接しているため、股関節の安定性に重要と考えられています。また、股関節の外転運動だけでなく、関節包の動きを引き出す役割もあると考えられており、小殿筋には多彩な役割が存在する可能性があります。
今回の記事では、”小殿筋”にスポットライトを当てて、機能解剖や歩行時の役割、関節可動域制限との関係性などを考えていきたいと思います!
1.小殿筋の解剖と機能
小殿筋の起始は腸骨外側面の前殿筋線の前方で、停止は大転子の前面(Anterior facet)または一部の線維は股関節前上方関節包に付着しています。
小殿筋は前部・後部線維の2つに分けられていると考えられおり、それぞれ股関節への作用が異なります。共通の作用として、股関節屈曲・外転・股関節屈曲90°位での内旋が挙げられます。線維別で考えると矛盾した報告もありますが、後部線維は外旋にも寄与する可能性が報告されています。
小殿筋は股関節外転の作用があると考えられていますが、そこまで外転に寄与する割合は高くありません。小殿筋の役割としては大腿骨を引き上げ、外転を開始する作用があると考えられています。肩関節でいうと、棘上筋と三角筋の関係性があると考えられています。
また、小殿筋の筋線維Typeを考えると、TypeⅠ線維の割合が高いと考えられます。TypeⅠ線維は遅筋であり、持久的な筋肉になります。関節包と密接な関係があり、遅筋が多いと考えられれているため、股関節の安定化に関与する可能性があります。
小殿筋の基礎的な機能解剖がわかったうえで、歩行や股関節の可動域制限などへの影響を考えていきたいと思います。
2.小殿筋と歩行の安定性
小殿筋は股関節の安定化の作用があります。そのため、小殿筋の機能低下が生じると立脚側の反対側の骨盤を支持することができず、スイング中に骨盤が傾斜し、股関節内転(内旋)が生じるトレンデレンブルグ歩行が認められます。
トレンデレンブルグ歩行は立脚期に最大骨盤降下が8°以上の場合を「陽性」と報告したものがあります。
一般的には中殿筋の機能低下がトレンデレンブルグ歩行の原因と考えられていますが、小殿筋の機能も重要になると考えられています。
例えば、小殿筋は深層筋であることや、TypeⅠ線維(遅筋線維)が多いと考えられており、関節の安定性や持久性に優れた筋肉と考えられます。また、小殿筋後部線維は大腿骨頚部と平行に走行しており、股関節を求心位に維持する可能性があります。