なぜ生じる?外反母趾

 

 

外反母趾は多くの方(特に女性)に発生しやすく、発生すると足部の痛みやバランス能力の低下、歩行障害など多くの問題に繋がります。外反母趾は一度発生するとなかなか改善しにくいため、外反母趾を発生させないための予防が大切になります。

 

外反母趾の発生に寄与する要因として、”変えることができる要因”と”変えることができない要因”があります。セラピストが介入することができる要因は限られていますが、今回の記事では、足関節背屈可動域制限と扁平足・開帳足がどのように外反母趾の寄与するのかについて考えていきます。

 

 

1.足部のアーチ

まずは初めに足関節背屈制限と扁平足・開帳足について解説する前に、足部のアーチについて解説していきます。足関節背屈制限が存在すると、足部アーチが崩れ、扁平足・開帳足に繋がり、外反母趾へと進行する可能性があるため、足部アーチについて始めに解説していきます。

 

外反母趾の評価や介入においても、足部アーチはとても重要になるため、しっかりと最初に理解しておく必要があります。

 

足部には内側縦アーチ、外側縦アーチ、横アーチの3つのアーチが存在しています。これら3つの個々のアーチも大切ですが協調的に作用することが大切になります。

 

 

足部はアーチの原理は「石の橋」を思い浮かべていただけるとわかりやすいと思います。「石の橋」は荷重や床からの反力を利用し、お互いに圧縮力を加えているため、とても頑丈な構造となります。

 

 

足部で考えると骨だけではこのメカニズムを維持することはできないため、足部に存在する靱帯・筋肉・神経が協調的に働くことで、アーチのメカニズムを保っていると考えています。

 

 

そもそも、足部アーチが存在することで、どのような利点があるのか?足部アーチがあることで足部は形を維持することができます。また、足部が硬くもなれるし、柔らかくもなれます。歩行でいうと、衝撃吸収する際には足部は柔らかくなり、蹴り出しの際には足部が硬くなります。

 

 

足部の形を維持する、硬さを調整できる機能は足部のアーチは単一で機能しているわけではなく、3つのアーチが協調して作用する必要があると考えられます。Natureで報告された論文の中には「横アーチは縦アーチの剛性の40%に寄与する」と述べられています。

 

 

つまり、アーチは個々に働くわけではなく、それぞれに影響を与えている可能性があります。そのため、アーチの影響を考える際には個々で考えるよりも、複合して考える必要があります。

 

では、足関節背屈制限が存在すると
足部アーチは崩れてしまうのでしょうか?

 

2.背屈制限と足部アーチの低下

まず、足部アーチが崩れるメカニズムとして考えられるものは、それぞれの骨に加わる圧縮力が小さくなる、または相互作用しなくなる場合、アーチが崩れてしまいます。

 

 

 

足関節背屈制限が存在すると、距骨の過剰な底屈+内転が生じ、下腿の内旋が過度に生じます。そして、舟状骨や楔状骨、中足骨が前方に移動してしまうため、荷重や床からの反力を圧縮力に変えることができず、縦アーチが低下します。

 

 

背屈制限が一時的なものであれば、そこまで縦アーチを低下させる心配はないと思いますが、負荷が繰り返し加わり続けると、靱帯や筋肉が伸張され、縦アーチが低下した扁平足を引き起こす可能性があります。

 

 

 

外反母趾を発症した症例は扁平足を8~24倍多く合併していると報告されています。しかし、扁平足があるから外反母趾になるのか?外反母趾があるから扁平足になるのか?はわかっていませんが、なんらかの影響は与えている可能性が考えられます。

 

 

 

足関節背屈制限が外反母趾に寄与する理由としては、背屈制限により足部のアーチが低下し、扁平足となることが関連していると考えられます。

 

 

 

実際に外反母趾の原因をいくつか見ていくと
・足部の回内
・背屈した第 1 中足骨
・硬いまたは柔軟な外反扁平足
など、足関節背屈可動域制限や足部アーチの低下に関連するものが多くあります。

 

では?外反母趾と足部アーチの関係性はどうなっているのでしょうか?

 

3.外反母趾と足部アーチの関係性

外反母趾が存在すると、内側縦アーチは崩れていると述べられています。

 

 

 

また、荷重ストレスによる内側縦アーチの崩壊は、第一中足骨回内を促進すると考えられています。内側縦アーチの高さが、第一中足骨の回内に影響する唯一の変数であることも示されています。しかし、第一中足骨の回内が縦アーチの崩壊を促進するのか、それとも先行するのかははっきりとしていません。

 

 

 

また、内側縦アーチが崩れていると、足根骨や中足骨は前内側に移動すような動態となり、横アーチの低下や中足骨間の開大を促進する可能性も考えられます。

 

 

 

実際に外反母趾患者の約16%に小趾の変形が合併しており、横アーチも扁平化する可能性が高いです。側方に偏位した小趾は、X線撮影により外反母趾角の増加、第2~3中足骨間角度の増加、第3~4中足骨間角度の増加、第一中足骨の内転の増加にも寄与していると考えられています。

 

 

 

また、別の報告でも
・外反母趾では縦アーチが有意に低下し、横アーチも有意に拡大している
・高齢者では荷重時M1-M5角が大きく、開張足が病因の1つ
と報告しているものもあり、やはり足部アーチの崩壊は外反母趾の発生や進行に、何らかの影響を与えていると考えることができます。

背屈制限と足部アーチの低下、外反母趾の関係性をまとめると…
足関節背屈可動域制限

繰り返される足部の代償が生じる

縦・横アーチの低下や拡大

外反母趾の進行に関連する

 

外反母趾の進行はステップに分けて考えるとわかりやすいです。今、どの段階にあるのか?そのような状態になっているのかをしっかりと理解しておく必要があります。(Stepについてはこちらの記事を参考にしてください)

https://theraview.jp/hallux-valgus-step/

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