人間の足部は複雑な構造をしており、さまざまな組織がそれぞれの機能を果たすことで、身体が支持されています。
そして、足部の骨・靱帯・筋が内側縦アーチ、外側縦アーチ、横アーチの3つのアーチを形成します。これら、3つ個々のアーチの働きも大切ですが、協調的なアーチの関係性も大切になります。
足のアーチの構造と動きの変化は衝撃吸収、体重伝達、移動中の推進力の提供などの足部機能に不可欠です。また、足底腱膜などの軟部組織と合わせた弾性特性により、床反力を吸収し、分散させることができ、筋骨格の障害や損傷のリスクが軽減されます。
これらの特性により、歩行中では、足部は着地時に柔らかく変化し衝撃吸収を行い、力のエネルギーを蓄え、蹴り出し時には硬く変化し、エネルギーを放出することで効率的な蹴り出しに寄与しています。
しかし、足の裏全体がほぼ完全または完全に地面と接触している状態である扁平足になるとアーチ機能が失われ、身体支持の機能や歩行時の衝撃吸収、効率的な蹴り出しが行えなくなる可能性があります。
また、扁平足が存在すると衝撃吸収機能が低下した場合、足底腱膜やアキレス腱などの他の組織に負担が増大すると考えられます。そのため、”足底腱膜炎・アキレス腱炎・シンスプリント・外反母趾”などの他の疾患や障害に関連するとも報告されています。
例えば、外反母趾と扁平足の関係について調査した論文では、外反母趾を発症している場合、発症していない場合と比べ、扁平足を8~24倍多く合併していると述べられており、 外反母趾と扁平足に関係性があることを指摘しています。
扁平足が存在すると、身体支持の機能や歩行時の衝撃吸収、効率的な蹴り出しが行えなくなる可能性や他の疾患や障害に関連するため、扁平足は改善させた方が良いと私は考えています。
※注意点子供の扁平足や膝OAでは扁平足(回内足)の評価や解釈に注意が必要です。簡単に考えて”扁平足があるから介入する”はナンセンスです。
今回の記事では、扁平足の基礎的な内容から、私が臨床で実施している評価-介入方法について記載していきたいともいます。
1.扁平足の基礎
扁平足は足部内側縦アーチが低下している状態です。そのため、足部内側縦アーチがどの頃から発生し、成熟していくのかを確認していきましょう!
乳児の足は脂肪のせいで平らに見えますが、子供が歩き始め、体重を支え始めると、足部アーチが現れ始めます。2~6歳の間に急速に発達し、12~13歳頃に成熟します。骨の未成熟、靱帯の弛緩により小児の扁平足の割合が高くなりますが、年齢とともに減少します。
このように、小児や子供の場合、未発達であるため足部アーチの形成も不十分であることが多いです。2~ 6歳までの子供の軟性偏平足の割合は21~57%とも報告されています。 そのため、発達過程・病的な扁平足を一概に”足部アーチが低下しているから扁平足”とまとめて考えてしまうのは危険です。
子供や小児の扁平足を考える場合、足部アーチや足部形態だけではなく、足底圧分布や画像評価、靴のすり減り、歩行状態などを複合して考える必要があります。
足部が成熟した18~ 21歳の若年成人の扁平足の有病率は13.6%と報告しているものや広範な成人集団における有病率は5~14%であると報告しているものがあります。
成人の扁平足は小児とは異なり、放置しても改善することは少なく、足部変形や歩行障害、他疾患に関与するため、私は出来る限り介入する必要があると考えています。
介入と言っても、すべての扁平足に介入するわけではありません。扁平足には2つのタイプがあります。 硬い扁平足と柔軟な扁平足です。 柔軟な扁平足は、体重がかかった位置で内側縦アーチが崩れ、体重がかからない位置では正常に戻ります。
逆に、硬い扁平足では体重の負荷に関係なく、内側縦アーチが崩れた状態です。私は柔軟な扁平足はセラピストの介入効果はあると考えていますが、硬い扁平足はセラピストの介入効果は少ないと考えています。そのため、この後の記事の内容は柔らかい扁平足への考え方と捉えてください!
では、扁平足が生じる原因には何があるのでしょうか?
扁平足が生じる原因はいくつか存在します。代表的なものに後脛骨筋機能不全症があります。後脛骨筋は内側縦アーチを支持するため、機能低下が生じるとアーチが低下し、扁平足へとつながります。
その他には、足関節背屈制限による繰り返しの後足部外反や距骨底屈+内転によるバネ靱帯の伸張、股関節外転筋群の機能低下による足部回内などが生じると扁平足に繋がる可能性があります。
そのため、何が原因として扁平足が生じているのかをしっかりと理解することが、扁平足の効果的な介入につながると考えられます。
2.扁平足の評価
扁平足の評価にはいろいろあります。私がよく臨床で用いている評価は筋力評価、FPI-6、舟状骨の高さ、X線写真評価です。フットプリントや足底圧分布の評価は機器が無いため、実施していませんが紹介します。
筋力評価ではHeel raiseであったり、タオルギャザーの把持する力、母趾や小趾の外転筋力を確認しています。後脛骨筋の機能不全が生じると
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