小胸筋に問題が生じると、肩関節屈曲の可動域制限やインピンジメントにより疼痛が出現することが多いです。そのため、肩関節に対して介入するにあたり、小胸筋は必ず評価-介入するべき組織といっても過言ではないと思います!
では「なぜ?小胸筋に問題が生じると肩関節屈曲の可動域制限やインピンジメントの症状が出現する」のでしょうか?
肩関節屈曲の運動は肩甲上腕関節だけでなく、肩甲胸郭関節の動き、つまり肩甲骨の動きも重要になります。
肩関節屈曲運動における、肩甲骨の動きとしては後傾+上方回旋+外旋(内転)が生じると考えられています。おおよその可動域は「前額面:上方回旋 約40°」「水平面:外旋 約6°」「矢状面:後傾 約25°」の動きが生じます。
しかし、小胸筋の短縮や小胸筋の柔軟性が低下していると、肩関節屈曲時に肩甲骨後傾、上方回旋、外旋が制限されてしまい、肩関節可動域制限、インピンジメントを引き起こす可能性があります。
※参考までに肩甲骨の運動はこの図をイメージしてください。
そこで、今回の記事では肩関節への介入において必須の小胸筋について、解剖学からから症状改善に繋がる介入方法を考えていきたいと思いまいます。
1.小胸筋の解剖学
小胸筋は前胸部に存在し、第3~5肋骨から起始し、肩甲骨の烏口突起に呈しています。作用は肩甲骨の前傾、内旋、下方回旋です。肩甲骨を胸壁に対して前下方に牽引し、肩甲骨を安定させるために重要と言われています。
さらに小胸筋の停止形態について、深堀りしていきたいと思います!小胸筋は烏口突起に付着すると解剖学書に書いてありますが、個体差の発生率は意外と高く、肩関節周辺の多くの組織と連続する場合があります。
いろいろな報告が存在しており
Gilbertらは、小胸筋の個体差の発生率は37.84%
肱岡らは、小胸筋の個体差の発生率は36.8%
植木らは、小胸筋の個体差の発生率は40%
では、その小胸筋の個体差について検討していきましょう。小胸筋の個体差は3つTypeに分けて報告されており、それぞれが肩関節の周辺の多くの組織と連続します。
Type1:最もよく生じるtype。烏口突起を越えて、棘上筋腱、烏口上腕靭帯、上腕骨大小結節、関節唇に付着
Type2:頻繁に生じないtype。小胸筋腱は烏口突起に停止し、残りの線維が烏口上腕靭帯、棘上筋腱、または肩甲上腕関節包に付着
Type3:まれなtype。筋全体が烏口突起を越えて肩甲上腕関節包または上腕結節に付着
これらの個体差をまとめると、小胸筋の延長腱は烏口突起を越えて多くの組織と幅広く付着する可能性があります。
小胸筋は多くの組織と連続していることがわかります。では、小胸筋の個体差に、何か臨床的な意味があるのでしょうか?