今回の記事は「腰痛とエコー画像~エコーから何がわかる?~多裂筋・腹横筋編」と「腰痛とエコー画像~エコーから何がわかる?~胸腰筋膜編」に続く第3弾になります。
腰痛の原因として一番多いと考えられている腰椎椎間関節と仙腸関節にフォーカスを当てて、記載していきます!
1.腰部椎間関節の解剖
腰部椎間関節は上位の下関節突起と下位の上関節突起から構成される滑膜関節です。椎間関節は関節包靱帯に覆われており、関節包の内側は滑膜に裏打ちされており、血管や神経が存在しています。
しかし、関節面の軟骨下骨は血管新生と細胞浸潤が乏しく、治癒能力がかなり低いと報告されているため、一度関節面が損傷すると元には戻らないと考えられます。
椎間関節には自律神経と侵害受容器が豊富に存在していると報告されています。そのため、椎間関節への過負荷による機械的刺激や外傷に伴う炎症が生じた場合、疼痛が出現する可能性があります。
その椎間関節の神経ですが、一般的には各椎間関節は対応するレベルおよび上位レベルの脊髄神経後内側枝が支配する(二重神経支配)と考えられていおり、神経支配はかなり複雑になっています。
ここまでをまとめると..
腰椎椎間関節は滑膜性の関節であり、神経や血管が走行しており、疼痛を感じる関節です。また、関節面の軟骨は血管が少なく治癒能力が低い部分です。
2.腰椎椎間関節の機能
腰椎椎間関節の機能としては、屈曲-伸展、軽度の回旋などの運動を行う以外に、脊柱にかかる軸圧荷重の伝達にも寄与しており、荷重の最大25%を負担する可能性があると報告されています。
腰椎椎間関節の運動や荷重の負担において、関節包靱帯の役割も大きいです。関節包靱帯は安定性を維持し、運動や負荷に伴う剪断力や引張力に対抗し、回旋や屈曲、伸展に対し、大きな抵抗力を発揮します。つまり、静的安定化機構になると考えられます。
腰椎椎間関節解剖・機能を踏まえて、椎間関節の変性と疼痛について考えてきたいと思います。
3.腰椎椎間関節の疼痛と変性
椎間関節の軟骨面には血管が少なく治癒能力が低いため、腰椎の過剰な伸展によるストレスが加わる続けると、疼痛が生じるだけなく、椎間関節の変性が進行する可能性もあります。腰椎の過剰な伸展は、股関節伸展可動域制限(四頭筋や腸腰筋の短縮)、多裂筋や腹横筋・大殿筋の機能不全などが原因でも生じます。
また、運動や荷重によるストレス以外にも椎間関節の変性は、椎間板の変性と密接に関連しています。椎間板は椎体同士の適合性を高める以外にも、脊柱のクッションとして働き、衝撃を軽減する役割があると考えれます。つまり、椎間板の変性が生じると、衝撃を軽減する作用が低下し、腰椎椎間関節への負担が増大する可能性が考えられます。
椎間関節性の疼痛は椎間関節への過負荷によって生じるものですが、その原因には脊椎の過伸展だけでなく、股関節関節可動域制限、椎間板の機能など幅広い原因で生じる可能性があります。
4.椎間関節性腰痛の評価
椎間関節性腰痛の評価として、私は問診・触診、下肢柔軟性、下肢体幹筋力、整形外科的テスト(Kemp test)などを評価しています。また、腰椎椎間関節性の疼痛を疑った場合、エコーを用いて椎間関節の状態を評価するようにしています。
問診にて疼痛の状況を確認します。腰椎椎間関節の疼痛は通常、朝、活動していない期間、腰椎伸展または体幹回旋で悪化し、椎間関節の触診(棘突起から1~2横指外側)で疼痛が誘発されることもあります。
気を付けるポイントとして、腰椎椎間関節性の疼痛は腰部だけでなく、様々な部位に関連痛を引き起こすと報告されています。そのため、例え鼠径部や大腿前面・後面の疼痛でも腰椎椎間関節性の疼痛を疑う必要はあります。
触診では椎間関節の圧痛、棘突起の圧痛(障害部位と考える椎間関節レベル)、手掌面で腰椎を伸展方向に圧縮した際の疼痛などを確認しています。
下肢柔軟性評価では、大腿四頭筋(Ely test)や腸腰筋(Thomas test)、ハムストリング(SLR)の柔軟性を評価します。下肢体幹筋力は大殿筋や腹横筋、多裂筋の機能を評価しています。
整形外科的テストでは、Kemp testを実施しています。評価方法は患者を立位とし膝を伸展したまま、腰椎を後側屈します。同側の疼痛が生じた場合を陽性と判断します。診断精度は低く、感度は50~70%、特異度は67.3%です。
5.腰椎椎間関節のエコー画像
腰椎のエコー画像は「Trident sign」「Camel humps」「Horse heads」の3つの画像で考えるとわかりやすいです。
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